「………行き…たい…っ。」

それは、

初めて私から出された気がした。


「聴きに…皆の…曲を聴きたい…っ。」

閉じ込めていたのか、どうなのか。

それさえもよく分からない言葉、想い。


その全てが、

この瞬間に全部出た気がした。


「ん。……合格。」

優しげに微笑む西谷さん。


何だか急に…葉月君に会いたくなった。


「じゃあ、決まりだな。

明日、葉月と一緒に来いよ。」

西谷さんは席を立つ。


「西谷さん…。あの…っ。」

社長さんのこと。

こんな我が儘…

許されるか分からないけど。

社長さんに会うのは避けたかった。


「碧眞だ。」

ポンッ…と、

いつかのように頭に手を置かれる。


「葉月には、俺から言っとくな。
....
スタジオに奏乃連れてこいって…。」

そう言うと、

彼はカフェから出ようとする。


「…あ…碧眞君…ありがとう…っ!!」

どこまで良い人なんだろう。


私が帰ろうとした時。

テーブルの上に伝票は無かった。