「はい。眼鏡。」

ふわっ…と、葉月君は

私に優しく眼鏡を掛けてくれた。


視界がまたはっきりになって、

目の前には綺麗な顔。葉月君だ。


あぁ。やっぱり。

認めたくない…けど、葉月君には…

"彼女"と似た安心感が有る。


無意識に葉月君の名前を呼んだのは、

きっとそのせいなのだろう。


「……ありがとう…。」

私がそう言うと、

葉月君はニコリと微笑む。

それさえも

"彼女"に見えて少し悲しくなった。


「……なぁテン。その子…奏乃とは、

どこで知り合った?」

社長さんは、さっきとは違う

真剣な眼差しを

その瞳に込めて葉月君に聞く。


…………やっぱり、この人。

私が…私の、"過去"を知ってる。

私と"彼女"が、共に歩いた時のことを。