「……私に音楽の才能は無いよ?」

楽器に、歌に、ダンス。


一時期あんなに練習を重ねたソレは、

私の中で無になろうとしている。

光を受け入れない分厚い箱に入れて、

思い出になろうとしている。


もう、やることは無いのだ。

この箱から出すことは無いのだ…と。


「別に構わない。才能が

有るか無いかなんて誰も知らない。

俺はただ、

カナに聴いてほしかっただけ。」


「………。」

何度私がここに居る無意味さを教えても

返ってくる言葉は同じなんだ。


「カナに聴いてほしかった。」と。


私はここに居たくないのに。

音楽なんて、聴きたくないのに。


「………そっか。」

最後には、私が折れてしまった。