葉月君の後ろに視線を移すと、

葉月君同様、

真っ直ぐに私を見つめている

西谷さんが見えた。


「テンが直感で決めたも同然なんだよ。

だからテンに何を聞いても意味ない。

俺からすれば、

何でそこまで聞きたがるのか

自分の音楽への才能を貶すのか、

そっちの方が不思議なんだけど。」

私としっかりと目を合わせながら

彼は続けた。


「そこまで理由を聞きたがる

ワケがあんのか?それに、

興味が無いと言ってもそれは今の事。

俺らの曲を通して、

興味を持っていけば良い。

俺はそれで良いと思ったけど。」

理由を聞きたがるワケ?


そんなの。

"不思議"に感じたから。ただそれだけ。

自分が興味を持っているモノに、

まるで興味を持っていない

私を連れてきた

葉月君が"不思議"で堪らないから。


私は音楽への興味を

わざと消しているのに、葉月君の歌を

聴くとそうもいかないのだ。

だから、今後はこのバンドとは

関わりたくない。

だから今のうちに離れておきたい。

"Canzone"とも、"歌手"の葉月君とも。


私はもう、

音楽と関わり合うのは辞めたの。

"Canzone"とも関わりたくないの。

これからも葉月君が私を連れて来ようと

思っているのならば、

今のうちに関わるのを

拒否したいと思うから。