「輔子、私は貴女を壊したくなくて、夜を共に過ごすことを控えていました」

「私を壊す…?」

「はい。自分の貴女への情熱は苦しいくらいに激しいのです。昨夜私を受け入れたのですから、身をもってわかっているでしょう?」

夫との濃厚かつ体力負けする夜の営みを思い出し、輔子はさらに頬を熱くさせた。

「毎夜抱いたら貴女が身体を壊してしまうでしょう。だから労って差し上げるため距離をおいていたのですが……このような歌を書き付けるほど貴女が嘆いてらっしゃるというのならば…」

重衡は例の紙を取り出し、輔子の目の前でそれを破り捨てた。

「昨夜も言いましたように…お覚悟を。この重衡の情熱全てを、余すことなく貴女に注ぎ込んで差し上げます」


普段穏和な夫の強気な態度に、輔子はふるりと身を震わせた。