数日後、ようやく熱が下がり始めたのを身体で感じた輔子は、ふと目覚めた深夜に起き上がり、小屋から外へ出た。

目の前にはすぐ海が迫っている。

海上には船が何艘(ナンソウ)も浮かんでおり、一門の中でも体力があったり、わりかし健康な者たちがそこを生活の場として使用していた。


不意に、彼女は空を見上げた。

星は見つけられなかったが、下弦の月が東の空に見えた。


「輔子、中に入りましょう。ここは潮風が厳しい。肌が荒れましょう」

いつの間にか、後ろに重衡がいた。

「…起こしてしまいましたか?」

隣で眠っていた彼には気づかれないよう注意して出て来たつもりだったのだが。

「貴女の温もりがなくなれば気づきますよ。それに…貴女まで海に身を投げてしまったらと…恐ろしく、不安なのです…」