それから再び船に乗り、四国の屋島へと辿り着いた一行は、そこの土地に暮らす漁夫の家を仮住まいとすることにした。
「輔子、起き上がれますか?水を持って来ました」
「はい…」
粗末な小屋の中で、夫と二人きり。
輔子は寝そべっていた身体をやっとのことで起こした。
「熱は…まだ下がりませぬか…」
重衡が水の入った椀(ワン)を渡しながら、彼女の額に触れる。
輔子はあの雨の山越えの後、熱を出して倒れたのだった。
重衡が一日中看病のため付き添っているが、四国に落ち着いた現在でも回復の兆しが見えない。
(私のせいで、重衡様にご迷惑が…。早く、よくならなければ…)
朦朧とする意識の中で、輔子はただそればかりを考えていた。



