そんな見るに堪えない夫の恐怖と嘆きに、輔子は精一杯の優しさを込めて応えた。

彼の背中をゆっくり撫でながら、語りかける。


「私が…共におります」


嗚咽が止んだ。

「人から憎まれ、御仏から罰をお受けになろうとも…この輔子がずっと重衡様のお傍におります」

彼女は夫の瞳を覗き込み、儚い微笑を浮かべた。


「苦しむならば、諸共(モロトモ)に」


何を感じたのだろうか。

重衡は目を見張り、純粋な少年を思わせる瞳を彼女に向けた。

「諸共、に…?」

「はい」

彼女の真っ直ぐな心が、その眼差しから伝わってくる。

眩しい、と重衡は思った。

「…やめて下さい。貴女にこのような業(ゴウ)を負わせたくはないのに…。貴女が優しいから、つい…甘えてしまいそうになります…」