階段を駆け下りようとした楓。

・・・

その手を掴んだオレ。

・・・

「私は何で、何も知らされてないの?」

・・・

泣きながら楓が言った。


「楓の為だ」

オレは優しい口調で言った。

・・・

楓は両親の愛情を一身に浴び、

大事に大事に育てられた。

・・・

両親の想いを、

分かってやってほしい。

・・・

オレの目は真剣だった。

・・・

その場に泣き崩れた楓。

オレは優しく抱きしめた。

・・・

「楓が生まれたばかりの時、

まだちゃんとしたお屋敷に住んでた。

しかし、楓が4歳の頃、

誘拐事件が起きた。

未遂で終わったが、

それを心配した両親は、身分を隠し、

ボロアパートに身を隠した」