「そなた、正気か?」 月が見える真夜中の廃ビルで、懐から取り出した手布を景時の腿の傷に巻いていた美しい鬼が顔を上げ、呆れた声で言った。 「だって… 目、赤いし。 色白だし。 いつも月、見てるし… それに…可愛いし。」 整った甘いマスクをさらに甘くとろけさせて、景時は微笑んだ。 傍に見える、彼女の肩が震え出す。 「ハっ 兎が可愛いというのには、同感じゃ。 だが、妾にそのような愛らしい名をつける阿呆は、そなた一人じゃろうな。」