(俺は騙されない。
ちょっと顔がイイだけの、ペテン師共め。)


佐々木は、理事長室に向かう廊下を先導する秋時の背中を睨みつけた。


「そーんな殺気立たないで。
今から紹介するから。」


途端に秋時が振り返り、苦笑しながら言う。

佐々木は慌てて中庭が広がる窓の外に視線を移した。

妙に勘が働くところも、気に入らない。
考えを見透かされているような気がする。


(今、俺が考えてることも、わかってやがンのかな。)


それならそれでいい、と佐々木はほくそ笑んだ。

例の『特別な生徒』は、秋時がどこかから預かったとんでもない不良か、多額の寄付金付きの世間知らずのボンボンに違いない。

ビシバシ、シゴき…いや指導し、教師の怖さを教えてやる。

ある意味、特別待遇だ。

そして秋時のニヤけた顔に、泥を塗ってやる…