慈愛学園二年五組担任数学教諭・佐々木剛(ササキタケシ)は憤っていた。

二学期初日、朝から理事長と校長に会議室に呼び出され、急に転校生を任されたのだ。

それは別に構わない。

この時代、色々な事情で急な環境の変化を余儀なくされる子供も珍しくない。
教師として、あたたかく受け入れて当然だ。

だが…


「特別な生徒なので、特別な配慮を。」


理事長と校長が、声を揃えて言った。

つまり『丁重に扱え』『厚待遇で迎え入れろ』ということらしい。

ナンダソリャ。

一人の生徒のみ特別扱いするなど、教師としてあるまじき行為。

愚の骨頂。

シンジマエ。


「そんなことはできません!」


もちろん拒否した。