小鞠の隣をすり抜ける時、うさぎを庇った彼女をぶった女生徒が、涙目で睨みながら低く呟いた。


「覚えてろよ、桜木。」


小鞠は素早く女生徒の手首を掴んだ。

もう怯えない。
もう怖くない。


「アナタも覚えといて。
私はもう、泣き寝入りなんてしないから。」


女生徒が大きく目を見開いて、小鞠を見た。

薫が短く口笛を吹く。

祥子は、小鞠カッケーと手を叩く。

いつも気弱そうに俯いていた小鞠は、もういなかった。

逃げる足音を背中で聞きながら、景時は隣にいる小鞠の頭に軽く手を置いて微笑んだ。


「許しちゃって、ほんとに良かったの?」


「いいの。」


「…
そっかぁ。
頑張ったね、小鞠ちゃん。」


「ううん。
まだまだこれからなんだから。」