景時はうさぎが解き放った気品溢れる深い『闇』が二人を包み込み、球を成していくのを見守った。

その刻は近い。

汗ばむ手に斬鬼刀を握り直し、漆黒の巨大な球体と対峙した。

血が滲むほど唇を噛みしめ蒼白になった顔に、狂気を宿したようにギラギラ光る眼がやけに目立つ。

純粋な『闇』に畏れをなした黒い霞が逃げるように漏れだし、球体の周囲に群がり始めたのを確認して、景時は静かに目を閉じた。


『妾は約束は違えぬ』


うさぎが小鞠に言った言葉を、景時も聞いていた。

大丈夫。信じてる。

神経を、精神を研ぎ澄まし、自らを刃の一部に変えて、持てる全てをこの一振りに…


 今じゃ、景時


愛しい人の声が頭に響き、血走った目を大きく見開いた景時は、渾身の力を込めて愛しい人を…

斬る。