(この人は、うさぎちゃん。
なんか… いつもと違うケド。
この人は、うさぎちゃん。)


聞き違えるはずがない。
冷たく透き通る、低めの声。

間違えるはずがない。
優しくてカッコイイ、憧れの人。


「良し。
怖れるな。
妾がついておる。」


満足そうな声と共に、勢いを増した風が意思を持っているかのように渦を巻く。

同時に、繋いだ手から強引に、だが優しくナニカが侵入してくるのを小鞠は感じた。

濃紫(コキムラサキ)を幾重にも重ねたような深みのある黒い風が螺旋を描いてうさぎと小鞠を飲み込み、周囲の景色を消していった。

闇に閉じ込められる。

もう自分の手すら見えない。

一筋の光さえ差さない、闇黒の世界。

息ができない。

圧し潰される。