「ぁぁァァアアガァァァァ…」


声を放って哭き始めた小鞠を意に介することなく、うさぎが涼しい顔で歩きだした。


「来るナ!!
グルナァァァァァ!!!」


しゃがみこんだままズリズリと後退る小鞠が涎を撒き散らして吼えるが、うさぎはもう止まらない。
小鞠の肩が不自然に膨張し、なんとか形を保っていたパジャマを引き裂きボロ布に変える。

マズい。
『闇』に飲み込まれる。

飛び出そうとした景時を、うさぎが視線を送って止めた。


「だがあの日、あの女共から妾を守ろうとしたそなたは、雄々しく勇敢であったではないか。
今、妾を喰らうまいと己を制するそなたは、優しく健気ではないか。」