母親が部屋の前まで運んでくれる食事にも、昨日から手をつけていない。

食べたくない。
だが空腹は感じる。
胃がキリキリ痛むほど。

食べたい。

食べたくない。

食べたイ。

ナニヲ?





ヒトヲ…


「小鞠。」


こんな自分を見ても、いつもと少しも変わらない透き通る声で名を呼んだのが誰なのか、見なくても小鞠にはわかった。


「うさギィちゃん…」


ゆっくりと顔を上げる。

本物のお姫様のように赤い着物を身に纏った憧れの人が、月光の下に立っていた。