いつの間にか景時は少し身を屈め、うさぎは少し浮かび上がり、互いを睨み合っていた。


「では、あの者を見捨てるか?
あの者を斬るか?
そなたにそれができるのか?!」


「うるせぇな!!
おまえを斬るくらいなら!
俺は!!!」


「…たガ すギギギ… グ…」


顔を歪ませた景時の悲鳴にも似た叫びに、蹲っていた小鞠が醜く形を変えた顔を上げた。


「…小鞠ちゃ…」


「いヤアァァァ!!
見ないデェェェ!
ゴ ないデェェェ!!」


鉤爪が生えた両手で顔を隠して咆哮した小鞠は、もはや人間のものではない脚力で跳躍して民家の屋根に飛び上がり、その向こうに姿を消した。