秋時との会話はいつも、オンとオフの切り替えが唐突で難しい。
景時と薫は揃って、間抜けな声を出した。


「寝間着を着た子供みたいなのが、足元に大量の『闇』をまとわりつかせながら、真夜中の散歩を楽しんでたらしい。
明らかに尋常じゃない『闇』に群がられているのに、本人にその気配はなかったそうだ。」


「誰が見たんだ?
足元に気をとられて宿主の『闇』に気づけなかったダケで、フツーに成りかけの人鬼じゃねぇの?」


「見たのは氷室のオヤジだ。」


景時も反論を口にした薫も、その名を聞いて口を噤んだ。

氷室のオヤジ。
現・慈愛学園用務員のオジーチャン。
元・腕利きのオニ狩り僧。
今では好好爺然とした笑顔を振りまいているが、その正体を二人は知っている。

ある意味、オニよりずっと恐ろしい…