「ハヤト?手、貸して」
ハルに言われた通りに手を差し出す。
「手…温かいね…」
差し出した手にハルの手が重なる。
ドキドキと鼓動がうるさかった。
「ハルの手も、あったかい…」
「こうやって、人の体温感じると
生きてるんだなー…って思うの。」
そう言いながら遠くを眺めるハルの横顔を僕はただ、見つめることしかできない。
「あのね、前に言ったでしょ?
人を見て想像を膨らますことが得意、って。
わたし、小さい頃から入退院を繰り返してて、
入院生活暇でさ、人を観察するくらいしかやることがなかったの。
で、自然と勝手にいろんな想像を膨らましてたんだ。」
ハルと僕の手は重なったままで。
寒いはずなのに、僕の手は少し、汗ばんでいた。
「多分、そのうち入院しなきゃならなくなる。
でもね、大丈夫。
入院には慣れてるから。
だけど、わたしは知っちゃったんだ」
「何を?」
「ハヤトとのこの時間の楽しさを。
でも、入院したらそれがなくなっちゃう。
だから、お願い、ハヤト。
わたしが入院したら…お見舞いに来て。」
「いいよ。毎日でも、ハルが来るな、って言うまで行くよ」
返事を迷うはずがなかった。
僕だってこの時間は楽しいんだ。
ハルは僕の返事を聞いて、
本当に、本当に嬉しそうに笑った。


