「私ね。家族を、10歳の時に事故で亡くしたの。
その時、私も一時意識不明の重体で、家族の最期を看取る事が出来なかった。
だから、この病院に人生の最期を看取る施設『特別病棟』があるって
知った時、ココに行こうって。
どんなに身寄りのない人でも、最期は1人じゃなく私が傍に居てあげたい。
寂しい想いはさせたくない、そう思ったの。」
10歳の時に、そんな辛い経験をしていたなんて――――
それを乗り越え、尚且つ人の為になろうと
懸命に、看護師と言う過酷な仕事を選んだ麻子さん。
なんて強い人なんだろう―――――――
「でも、ダメね。人の死は、何度経験しても耐えられないの。
後輩や他の患者さんにはこんな姿見られたくないから、こうして夜にココに来るの。月を見ていると、少し落ち着くから・・・。」
そういうと、また月を見上げた。
それと同時に、涙がホロリと1つ流れた。

