幸せまでの距離


駅前通りは人の往来が少ないため、3人の話し声はけっこう響いていた。

ホームにいる駅員が、チラチラと落ち着かない視線をよこしてくるほどに。


メグルはショウマに対しても尻込みせず、まるで以前からの知り合いのようにフレンドリーに話している。

「リク君はね、前、ウチの店でバイトしてたんだ。って、その時はあたしの方が後輩だったんだけどね。

リク君って、バイトの子だけじゃなくてお客さんにもモテてたよね~」

「へえ、リクってそうなんだ」

メグルの思い出話に乗っかるショウマ。

リクは「メグルちゃん! その話はやめてよっ」と、恥ずかしそうに目を泳がせ、話の流れを止めようとする。

メグルはそれを察しているように、ショウマに人差し指を振ってみせた。

「でも、残念!

あたしはリク君の彼女でもないし、リク君にもそんな気はないんだよ。

リク君にはちゃんと好きな子がいるんだから」

ショウマはすかさず「それって、メイちゃんのこと?」と、訊(き)く。

「ショウマくん、メイのこと知ってるの!?」

メグルは意外そうに目を丸めて、

「うん。メイのことだよ」

「メグルちゃんも、メイちゃんの知り合い?」

再び質問するショウマに、メグルは答えた。

「そうだよ。メイとは高校で知り合ったの。

クラスも3年間一緒だったんだ」