男は翔子より年上なのだろうが、メイの実の父親とは全く違う容姿をしている。
歯が悪いのか、男にはやたら舌で口の中をなめ回すクセがあるようで、常にクチャクチャ音を立てている。
メイは子供ながらにそれを気持ち悪いと感じた。
コンピューター関係の仕事を在宅でしている、と、男は言った。
時々取引先に出向く以外で外出する必要がないからか、服装もラフ。
タバコのにおいをさせながら、仕事に使うノートパソコンをいそいそメイの家に運び込んでいた。
「メイちゃん、よろしくね」
人の良さそうな笑みで挨拶されても、メイは彼に心を開けそうにないと思った。
“りこんからまだ半年もたってないのに、なんで……?”
メイには大人の心境の変化を理解することができなかったが、男が来てから翔子は陽気になったので、しぶしぶ三人での生活を受け入れることにした。
翔子が怒り狂う様を見たくなかったので、本音を口にすることもなく……。


