幸せまでの距離


ミズキはマナと出会ったキッカケをこう話していた。

『マナを初めて見たのは入学式の時だった。

マナとは幼稚園はもちろん、小学校も中学も違うのに、初めて会った感じがしなかったんだ。

でも私とマナは科が違ったから……なんて言い訳なんだけど、話しかけるキッカケをつかめずにいて。

3年の夏に、図書館で偶然マナに会えた時は、嬉しかったなぁ。

今だから言えるけど、3年間ずっとマナのことが気になっていたのは、私の中の無意識がこういう友達を求めてたって証拠だったんだと思う』

そんなドラマみたいな話あるわけがない。

メイはミズキの経験談を即否定した。

『メイもいつか、わかる時がくるよ。

この感覚は体験しなくちゃ分からないから口で説明するのは限界があるし、メイが理解できないのも仕方ないもん』

ミズキは聖母のように穏やかな表情でそう返すだけだった。

メイは唯一の友達であるメグルに対してそんな感覚は働かなかったし、今日の入学式で出会った生駒カナデという女子にも、何も感じなかった。

ミズキが言う無意識からのシグナルを、メイはまだ体感できていない。

……だが、マナに対しては、言葉にできない何かを感じているのはたしかで。

ミズキの親友だから?

マナは過去に何かあったような雰囲気だから?

これがミズキの言うシグナルなのか?