ミズキとマナはさきほどちょうど午前の講義を終わらせたらしく、学食に寄って軽く食事をした後ここへ来たらしい。
いつもマナの横にいるシュンは急なバイトにかりだされ、昼食も取らず勤務先のホテルエターナルに向かったそうだ。
メイは、今1番会いたいと思っていたミズキが現れて、無表情とは裏腹にホッとする。
ミズキとマナはメイの姿を見つけるなり、二人並んでメイの座る座席の前に立った。
「今日、専門の入学式だったんだよね。ミズキちゃんに聞いたよ。おめでとう」
マナがメイの入学を祝う横で、ミズキは電車の出入口に目をやり、
「お母さんは一緒じゃないの?」
と、菜月の居場所をメイに尋ねる。
「……先に帰ってもらった」
メイが伏し目がちにそう言うと、ミズキは昨夜のことを思い出してさらに訊(き)く。
「そうだったね。昨日、寝る前に、リク君と約束してたもんね。入学式の後に会うって。
もしかして、もうバイバイしたの?」
それは尋問という声音ではなく、メイへのささやかな関心を示す柔らかい口調だ。
ミズキは、リクとメイにすぐさま恋仲になってほしいとは思っていないが、メイがリクとコンタクトを取っていることを喜んでいる。
メイは菜月と大成から自分専用のケータイをプレゼントされ、毎晩のように、それでリクと連絡を取り合っていた。
しかしメイは、ミズキの問いにはこたえず、色のない視線を車窓の向こうに並ぶビル群に送る。
まるでリクに関する話題を避けているかのように。


