幸せまでの距離


「感謝されるようなことなんて、何 も…!」

そんなメイの言葉を遮ったのは、彼女の 体に加わったリクの腕の力。

抱きしめる腕に、力がこもる。

「メイが望むのなら、どれだけでもあげ るよ、俺の気持ち」

夏の熱さだけではない。

メイの心に、じんわりと何かが灯った。

さざ波の音が、二人を包む。


メイを抱きしめながら、リクは片方の手 でメイの背中にある傷を撫でた。

「よく、がんばったね、メイ。

ずっと、独りで我慢してきたんだよ な……。

長年、ひとりぼっちにしてごめんな」

「……」

メイは、声も出さずに涙をこぼした。

安堵感。解放感。安らぎ。ぬくもり。あ りのままの自分を、好きな人が受け入れ てくれた喜び。


そっと体を離し、二人は間近で見つめ 合った。

リクは朗らかな顔つきのまま、両手でメ イの顔を包む。

「昔から変わってない。

メイの心、可愛くて愛しい」

「……今までと逆。

泣いてたのは、いつもリクの方なのに」

止まらないメイの涙。一方、リクは穏や かなままだった。

「泣かないって、決めたんだ」

“メイの過去を知って泣くのは、ただの 同情。メイの生い立ちをやみくもに否定 してるようなもの。

そんなこと、俺はしたくないんだ。

だから、笑う。

メイのために。自分のために”