翌日の朝、リクとメイは、バスに乗って とある海に到着した。
「海に行こう! 一緒に」
リクの提案だ。
ここは、海水浴場で水も綺麗なのだが、 あまり人のこない地域である。
ほぼ借りきり状態。岩場に囲まれた階段 を下りると、見晴らしのいい砂浜が広 がっていた。
「水着持ってこいって言うから一応持っ てきたけど、本当に泳ぐ気!?」
メイは顔をひきつらせ、抵抗した。
浜辺のそばには、夏だけ経営している小 さな商店があり、店内のカーテンルーム で着替えもできる。
「昨日、手紙読んだ? 私、水着なんか 着ないから」
そっけない口調でバス停に戻ろうとする メイの前に回り込み、リクは言った。
「本当は、ずっと泳いでみたかったん じゃない? 海で」
水着の入ったビニール製のバッグを抱き しめ、メイは立ち止まった。長袖のシャ ツに、汗がにじむ。
着ることもない水着。小学生の頃、水泳 の授業中、クラスメイトに体の傷をから かわれて以来、メイは人前で肌をさらさ なくなった。
どんなに暑くても、我慢していた。
泳ぐのは苦手だけど、本当は、誰にも気 兼ねせずに海水浴をしてみたかった。
最近、ますますそんな気持ちが膨らん で、ネットショップで水着を買ったりも した。
リクは、そんなメイの心情に気付いてい たからこそ、調べに調べてこの海にやっ てきた。
有名な海水浴場は、どこも大勢の人でに ぎわっている。そんなところへ、嫌がる メイを連れていけない。
人気(ひとけ)の少ない場所なら、メイ も楽しめるのではないかと思ったのだ。


