空の画像が、便箋(びんせん)全体に 写っている。罫(けい)線のない、シン プルな手紙だった。
メイの字は、黒インクで綴られている。
《世の中には、たくさんの女性がいる ね。そんな中で、どうしてリクは私を好 きになったのか、ずっと分からなかっ た。
でも、最近は、変わってきた。
疑うばかりじゃなくて、その好意を信じ てみようか、って。
私、今は、自分のことが前より好きに なってきた。大切にしたいと思えるよう になった。
もう知ってると思うけど、私は何度も虐 待を受けた。その影響で性器に傷を負っ てる。正確に言うと、筋肉が傷つけられ たことで、自然分娩(ぶんべん)ができ ない体。
妊娠できるのかどうかも分からない。精 神的なものなのか、生理もこない。
性器だけじゃない。全身にいろんな傷痕 がある。人前で肌をさらしたくないの は、今も同じ。
普通の恋人同士だったら、今の時期、海 に行ったりする。
もし、リクがそういうことを望んでも、 私は答えてあげられない。それどころ か、リクを嫌いになるかもしれない。
私のことを誰よりも知ってるのはリクだ けど、私のことを誰よりも知らないのも リクなんだよ。
でも、これから先も、リクと同じ未来を 生きたいと思ってる。
私は今まで、「男」という型にはめてリ クを見てた。
それは間違っているって気付いた。
これからは、「松本リク」という一人の 人間として見られるように努力するか ら。
だから、私のことも、「女」として見な いでほしい。
お互いに、それは難しいかもしれない。
でも、「星崎メイ」という一人の人間と して私を見てほしい。
私達の結末に不幸はいらない。
山梨のホテルでリクが言ってくれた言葉 が、毎日の支えになってるよ。》


