ゼミが終わると、リクは急ぎ足で大学を 出た。
夕方だというのに、まだまだ空は明る い。
“もう、夏も本番だな”
強い熱を放つアスファルトを歩くと、次 第に汗が流れてくる。
「当たり前とはいえ、毎日暑いなぁ」
ため息混じりにつぶやきつつ、メイとの 待ち合わせ場所まで早足で向かった。
まだ、約束の時間まで余裕はあるけれ ど、メイと、デートらしいデートをする のはこれが初めてなので、リクの気持ち は上向きだった。よって、足取りも無意 識のうちに軽くなる。
笹原のカウンセリングを受けてしばらく 経った頃、メイは自宅のリビングで猫を 抱きながら、リクにこう言った。
『一緒に山梨に行った日から、気持ちに いろんな変化があった。リクに対して も……。
リクは、私に付き合ってくれるって言っ た。でも、油断したら私の気持ちが悪い 方に変わりそうで。今はやっぱり、ハッ キリした返事はできない。
アンタと付き合ってく覚悟ができたら、 その時はまた、私から言う。カウンセリ ングして、自分と向き合う。
答えが出せる時まで、待ってて』
おそらく今日は、メイの気持ちを聞ける 日になると、リクは予感していた。
そう言われたわけではないけれど、昨夜 電話で、今日の約束をとりつけたメイの 声は、いつになく緊張していたか ら……。
“メイの答えが、出たんだな”
楽しみな反面、振られるのかもしれない という不安もわずかにある。
“ううん…! 大丈夫。
メイはもう、あらゆることから逃げな いって決めたはずなんだ。
俺はずっと、それを見守ってきたじゃ ん!
メイとの未来を、信じる…!”


