幸せまでの距離


メイが自室に戻ると、子猫達は床やベッ ドの上でまどろんでいた。

最近では、子猫とは言えなくなってい た。みんな、ここへ来た時より成長し、 体が大きくなっている。

幼い頃の育て方が影響しているのか、み んな甘えん坊で内気な性格になり、自由 に外を出歩けるよう窓や扉を開け放して いる昼間も、メイのそばを離れようとし ない。

カナデは「猫らしくない」と心配してい たが、そんな猫達が心から愛しいし可愛 くて仕方がないと、メイは思っている。


猫達が寝ている間、簡単に部屋の掃除を し、メイはノートを開いた。

何かあるたびにこうして書くことが、も う、習慣になっている。

《母の愛は偉大だと思った。

翔子からは感じることができなかったけ ど、大抵の母親は子供を守り、時には自 分の命までも犠牲にする。

マユミさんやシェルが持つ強い母性に、 救われた気がした。


またひとつ、自分を好きになれた。

他人に手を差しのべる勇気も、困難に立 ち向かう強さもないけれど、今より好き な自分を見つけることができたなら、今 まで以上に幸せになれる。

人には、無限の可能性があるはずだ。 きっと、私にも……》


夕方、リクと会う約束をしている。

彼も、本来なら夏休みを送っている身で あり、昼から会うこともできるはずなの だが、教授の都合により、長期休暇にも 関わらず、リクはゼミに出席させられて いるらしい。

ノートに気持ちを綴った後、レターセッ トを取り出し、メイは一通の手紙を書い た。

普段以上に身なりに気を配り、全身鏡で 最終チェックをすると、猫達の体をな で、家を出た。

リクとの待ち合わせ場所に向かう足取り が、今日はいつになく軽い気がする。