季節は、8月。メイがカウンセリングを 受けて3ヶ月が経っていた。
それまでの間、様々なことがあった。
カナデの退院後、彼女の自宅に呼ばれ、 メイはこれ以上ないほどのおもてなしを 受けた。
今まで、他人を犠牲にしてばかりだった メイも、感謝される側の人間になって気 付いたことがある。
『やられたことをやり返す』
高校時代までは、そんな心持ちで生きて いた。
それは一見、不条理な世の中に仕返しを した気になるけれど、違う。『自分を下 げて生きること』でしかない。
ムシャクシャした気分をすっきりさせる ためだけに、自分を痛め付けた相手と同 じレベルに成り下がっていただけなの だ。
《私が望んでいたのは、仕返しすること じゃない。
感謝されたくて毎日を生きてるわけじゃ ない。
ただ……。自分のしたことで他人が喜ん でくれるのなら、それもいいかもしれな いと思ったんだ。
私は生き方が下手だけど、恨まれたり悪 口を言われるより、喜んでもらったり笑 顔を向けられる方が、ホッとできるん だ。》
メイはノートを見つめた。
“こう思えるようになったのは、笹原先 生がいたからだね”


