その後も、メイのカウンセリングは続い た。
一般的な子供は、親に叱られたり褒めら れたりすることで自分の心を育み、周囲 の人々との関係を築いていく。
しかし、メイの場合はそういった過程が なく、そのうえ虐待されてきたというこ とで、対人関係を上手く処理出来ず、孤 独感を募らせることになった。
笹原のカウンセリングは、生きていく上 で必要な自分への愛情を取り戻すことを 目的に行われた。
メイの書いたノートを見て、笹原は知っ た。
メイの頭の中には、『愛されることは性 交渉を強要される』という、間違った刷 り込みがあるということを。
そういった思い込みを消していくこと が、メイを孤独や傷から救う唯一の方 法。
カウンセリングのたび、メイは笹原に質 問をされ、受け答えしていく。
帰ると必ずノートに詩や気持ちを書い た。義務ではないけれど、メイは、書く ことで気持ちの整理ができているのを感 じていた。
笹原が言っていた。
「精神的な病を患う人は、感性の高い、 繊細な人とも言えるんだよ。メイさん も、もしかするとそういうタイプかもし れないね。
感性の高い人は、画家や小説家、歌手と いった、クリエイティブな才能を開花さ せやすい人だから」
メイにはパティシエになるという夢があ る。
笹原の言葉は、闇に蝕(むしば)まれそ うなメイの心を救ってくれるようだっ た。


