幸せまでの距離


夢中で詩を書いていると、時間が経つの は早かった。

もう、23時を過ぎている。

メイはいったん、芯の短くなった鉛筆を 脇に置き、ノートを見た。

けっこうな量の文字。我ながら、よくこ んなに思い付いたものだと驚いた。

本や詩集を読んだことなんてほとんどな いのに、こんなにも書けた自分が、なん だかおかしく思える。

笹原に話を聞いてもらったおかげだろう か。


「自分の気持ち、か……」

ノートをめくり、新しいページを開く。

メイの頭の中には、一言では表現できな いくらい、様々な想いがある。

笹原に会ったら、うまく話せない場面も 出てくるかもしれないので、メイはノー トに、素直な気持ちを書くことにした。

前向きに生きていくために。


《昔、自分の家は「普通」だと思って た。

でも、毎日が終わるたびに、追い詰めら れていく自分がいた。

友達がほしい。休みの日には、たくさん の友達と出掛けたりしてみたかった。

親と仲良くしゃべって、お母さんと買い 物に行ったり、ご飯作るの手伝ったり、 テレビを見ながら笑いあったりしたかっ た。》

書いていると、胸が痛くなってきた。心 なしか、呼吸まで苦しくなってくる。

しかし、メイは書くのをやめなかった。

戦う相手は他人ではなく、自分自身 ――。