しかし菜月は安心できず、苦笑いをする。
「あの子とは、同じクラスなの?」
訝(いぶか)しげに尋ねる菜月に、メイは平らな声でこたえた。
「生駒カナデ、だって。
同じクラスみたい」
「そうなの……。生駒さん、か。何もないといいけど……」
言葉とは裏腹に、菜月の表情は曇る。
第一印象だけでその人の全てを決めつけてはいけない――。
そう分かってはいるのだが、菜月は《第一印象こそ、その人の全てを映す鏡》という持論を捨てきれないでいる。
自分のカンを100パーセント信じた場合、生駒カナデは普通でない。
穏やかでない菜月の心中は顔にも表れていたようだ。
「心配しすぎ。大丈夫だって。
もし何かあったとしても、たった1年だし。高校みたいに長くないだけいい。
それに、カナデとはそこまで絡まないだろうし」
メイは菜月の不安を読み取り、言った。
その目からは、以前のメイにはなかった、身内を案じる心がにじみ出ている。
菜月はメイの言葉通り、何事も起こりませんようにと願いを込めて、
「そうよね。大丈夫。私の考え過ぎよね」
と、メイに笑顔を向けた。
第2話《二人の違い》 終