幸せまでの距離


自室に入ると、メイは子猫達に出迎えら れ、ホッとした。

こんなにもあたたかい存在がそばにあ る……。

一匹一匹抱き上げつつ、メイは何かに突 き動かされるように、カバンに視線を やった。

笹原にもらった大学ノート……。

日記を書く習慣などなかったけれど、何 かを書きたい気になる。

子猫達をベッドの上に寝かせると、メイ はすぐさま机に向かい、そのノートを広 げた。

何も書かれていない、ごく普通の大学 ノート。新品だと分かる紙のにおいがし た。

それを見た瞬間、メイは、《キャンバ ス》という言葉を連想し、さっそく鉛筆 を手に、こう書いた。

《『キャンバス』

子供は、生まれながらに真っ白なキャン バスを持っている

育ての親によってキャンバスの色を染め られていく

子供はキャンバスを捨てられない

どんな色になっても、それを背負って生 きていかなきゃならない》

詩は、まだまだ思い付いた。

《『しゃぼん玉』

消え行くシャボンの玉は、私

生まれた感情 すぐに消える

生まれた想い なかったものに


しゃぼん玉は、遠い思い出

私をほめたことを、あの人はきっと覚え ていない

私も忘れたフリをしてた

嬉しかったこと

愛を欲しがっていたこと


欲深い私

もっともっと、と、欲しがる心

……だからゴミ箱行きになった》