幸せまでの距離


翌日。メイは、ミズキと共に、笹原のも とを訪ねた。

ミズキの授業が終わるのを待ってから向 かったので、二人が笹原の研究室に着い たのは夕方になってからだった。

本当なら、リクもここに来るはずで、彼 もそれを強く望んでいた。

けれども、今日になって急に、リクはゼ ミの振り替え授業に参加しなくてはなら なくなり、ここに来れなくなった。それ というのも、ゼミを受け持つ教授のスケ ジュール上の都合が原因らしい。

リクは同席できないことを悔やんでいた が、メイは気にしなかった。

リクとはそんなことで終わりが来る関係 ではない。山梨に行った日から、そんな 考えが根付き始めているから。


薄暗い廊下を抜けると、メイ達は、明る い光に満ちた笹原の研究室内に通され た。

「いらっしゃい。はじめまして。笹原で す。

星崎さんから、お話は伺っていますよ」

向かい合ってテーブルに座るメイと笹 原。ミズキはメイの隣に座った。

「どうも……。星崎メイです」

どう返していいのか分からず、メイは伏 し目加減にそうつぶやくのがやっとだっ た。

カウンセリングだから気楽にしていい と、ミズキに言われていたけれど、何は ともあれ、これから自分の心を見せる相 手である。しかも、相手は男性。メイは 少し身構えていた。

笹原は、相談者のそういった言動に慣れ ているようで、普段の穏やかな口調で 言った。

「これから、メイさんの話を聞いていき たいと思います。

カウンセリングには家族の同席が望まし いので、今日はミズキさんにも来てもら いました。

しかし、家族の同席が不都合な場合や、 家族に聞かれたくないことがある場合 は、ミズキさんに退いてもらうこともで きます。

メイさんはどうしたいですか?」

「いてもらって、いいです」

メイは短く答えた。

「では、これからいくつか質問をさせて いただきますね」

笹原は、箇条書きの文章を読み上げるよ うに、メイに様々なことを尋ねていっ た。

生まれた場所。好きな色。嫌いな物。今 まででもっとも印象に残っている出来 事。

そういった質問に答える時の、表情や口 ぶりから、メイのトラウマを紐解いてい くというやり方である。