メイにはカナデの全てを否定するつもりなどなく、穂積翔子という人間を間近で見てきたからこそカナデにああ言ったのだが、カナデはそうは受け取らなかった。
“私のトウマに対する想いを否定した……!
メイちゃんは、トウマの夢を馬鹿にしたやつらと一緒だ!”
今回は特別だったが、基本メイは、自分の過去を人に語る気などない。
その意思はこれからも変わることはないだろう。
それが、カナデのメイへの見方をねじ曲げ続ける要因になることなど、今のメイには想定外のことであった。
嫌われるのには慣れているし、ウソで塗り固めた言葉を吐くのは好きではない。
メイはそんな気持ちでカナデに対した。
カナデはこの日、メイを徹底的に不幸にすると決めたのだった……。
“星崎メイ……。
許さない。
二度とそんなこと言えないようにしてやる……!”
メイは別館前で菜月と待ち合わせると、どちらかともなく校門の外に出た。
菜月は入学式前にあった騒動以来、浮かない顔をしている。
「メイ、さっきの子と話してたけど、大丈夫だった?」
「別に、何とも。
お母さんこそ、考え過ぎ。顔色良くないよ」
メイは愛称を口にし、思いやりを込めて菜月の顔を見つめ返した。


