幸せまでの距離


訪ねてきたのは、山本だった。

「どうしたの? いま、友達いるんだけ ど」

ショウマの困惑した声。次に、

「リク、山本さん入れていい?」

と、質問される。

「うん、俺は別にいいけど」

リクの返事を待って、玄関扉が閉まる音 がした。

山本に会うのは初めてである。

リクは急いでソファーからどき、お茶入 りマグカップを持ったまま部屋の隅に移 動した。

ショウマと山本がソファーの部屋にやっ てくる。

ただならぬ雰囲気に、リクは息をのみ、

「俺、外に出てるよ」

「いや、君にも居てほしい」

山本がこわばった顔つきでそう言ったの で、リクはおずおずとその場に座った。

山本は座りもせず、立ちっぱなしのま ま、座りそびれたショウマに尋ねた。

「大学を辞めるって、本当か?」

「なんで、そのこと…!

山本さんには話してないのに……。もし かして、ウチの母親から聞いたの?」

「ああ。今朝、電話があってなぁ。

ビックリしたよ。どうしてなんだ、ショ ウマ」

しばらくの沈黙の後、ショウマは悔しげ に答えた。

「山本さんと、堂々と付き合いたいから だよ。

山本さんだって、ウチの親の勝手さを 知ってるだろ?

あいつら、俺と山本さんが関わるのを良 く思ってないし、縁を切れとまで言って きた……。

でも、ふつう無理だろ!?

俺にとって、山本さんは親友でもある し、父親なんだから。

ずっと諦めてた。本当の父親に会えるこ と……。でも、やっと会えた!

山本さんは、俺と会えなくなってもいい わけ?」

「違う、そんなことは思ってないし、 ショウマがそう言ってくれて本当に嬉し いよ。

こんなダメな父親なのに、まだ会いたい と思ってくれるなんて……。

でも、大学を辞めたら、ショウマはきっ と後悔する。だから……」

山本は、リクを一瞥(いちべつ)した。

「そこの友達だろう?

ショウマ、言ってたよな。愛知を離れて ここで一人暮らしをすることになったけ ど、毎日が楽しいって。友達ができたっ て。

今まで、あんな風に友達のことを嬉しそ うに話すショウマの姿、見たことがな かった。

ショウマも、分かってるんだろう? 自 分が無理をしているって」

山本の言う通り、ショウマは大学を辞め たくなかった。リクがいるから。