幸せまでの距離


「ウチ、寄ってく?」

ショウマが言った。

「リク、さっきからすごい難しい顔して る。

ウチでたこ焼き食べてかない? 入学前 にたこ焼き器買って、最近やっとまとも に作れるようになってさ。

誰かに試食してほしいんだよねー」

ショウマは、彼らしい普段の明るさを取 り戻していた。リクは少しだけホッとす る。

「うん。じゃあ、ちょっと寄らせてもら おっかな」


数十分後、二人はショウマのアパートに 着いた。

「何か手伝うよ」

「いいって、今日はリクはお客さんなん だから」

「えっ、でも……」

部屋に入るなりリクをソファーに座ら せ、ショウマはお茶を淹れた。

「これ、最近ハマってんの。

ルイボスティー。雑貨屋で安売りしてた の買ってみたら、意外においしくて」

「なんか、変わった香りがするし苦味が 強いね。でも、おいしいかも」

リクは、渡されたマグカップに口をつけ る。こわばった気分が和らいだ。

ショウマは誇らしげに説明する。

「どっかの民族は、ルイボスティーを常 用してて、ミルクティーにして飲んだり するんだって。

美肌効果とか、活性酸素除去の効果があ るから、体を若々しく保てるんだって。 なんだったっけ、奇跡のお茶とか、不老 長寿のお茶とか、そんなキャッチコピー があるんだ。

とにかく、ストレスまみれの現代人には 嬉しい成分がいっぱいってわけ!」

「そうなんだ。最初はクセのある味か なって思ったけど、慣れるとそうでもな いね。

メイにも飲ませてあげたいなぁ」

「女の子なら、なおさら喜ぶかもね!

ルイボスティーは女性のためのお茶とも 言われてて、不妊治療の手助け的な役割 もあるらしいし。ノンカフェインだか ら、妊娠中の人も飲める」

「そうなんだ」

ショウマの説明に感心しつつ、リクがマ グカップの中の茶褐色を見つめている と、インターホンが鳴った。

ルイボスティーの解説をしつつたこ焼き の準備をしていたトウマは、「はいは い、いま出まーす!」と、玄関に飛んで いく。