「また、星崎さんのように両親の愛を感 じて育った場合、適度な自尊心と自己防 衛本能が育まれるから、他人から危害を 加えられた時は、適切な形で自分を守る ことができる。
一方、メイさんはその逆で、自分にひど いことを言う人と親密になりやすい。そ れは、幼い頃から両親に刷り込まれた影 響なんだ。
両親からこわいことや痛いこと、嫌なこ とをされても、子供は虐待行為をそのま ま受け止めようとしない。
『両親は私のことが好きだからそうする んだ、私は両親に愛されているに決まっ てる』。幼い頭で両親からの虐待を前向 きに受け止めることで、恐怖や痛みの 中、無意識のうちに自分を守ろうとす る。
だからこそ、成人しても、自分を傷つけ てきそうな人と付き合うようになる。こ れは、虐待被害者の大多数が通る 道……。
やめられないドラッグや、繰り返す売春 行為。親友の書いた本には、性犯罪や虐 待の被害者による犯罪行為や自傷行為が 後を絶たないとあった……」
「このままにしておくと、メイもいつか そうなるかもしれないということです か?」
ミズキは涙目になっていた。
この先、何があっても、命をかけてメイ を救いたい。そんな思いでいっぱいにな る。
「星崎さんとの出会いが、メイさんに良 い影響を与えているのはたしかだよ。た だ、トラウマが原因で起きる犯罪行為 は、本人にはどうすることもできない。
大人が子供に植え付けた負の遺産と表現 するに足りないものだから。
メイさんが、自分の中に巣くう本当の自 分に飲み込まれてしまう前に、メイさん を助けたい。
時間がかかるかもしれないけど、全力で 力になるよ…!」
笹原は、授業中にすら見せない真面目な 顔をしていた。
「お願いします! メイに、心の底から 幸せを感じてほしいんです……!」
ミズキは頭を下げた。


