幸せまでの距離


「直接メイさんにお話を聞いてみないと 分からないんだけど……」と前置きし、 笹原は続けた。

「メイさんも、精神的なショックが引き 金となって月経が来ていない可能性が考 えられるよ。

人は、脳下垂体でホルモンの働きを調整 して月経が来るようになっているんだけ ど、性的虐待を受けた女性の中には、強 いストレスでホルモン調整を狂わせてし まう人もいる。

人によるから、一概には言えない。性的 なトラウマを抱えていても月経のある女 性はいるから。

ただ、メイさんに月経が来ていないとし て、その原因を推測するとすれば、性的 な被害にあった自分を責めている。ある いは、自分が女性であることを深層心理 レベルで拒絶しているために、女性ホル モンの分泌が妨げられていると考えられ る。

ただでさえ、女性の心身はデリケートだ から。一般的にもよくあることで、強い ストレスが原因で何ヵ月も月経が来なく なってしまったり、妊娠中にイライラし たり。

近年だと、若年性更年期障害といって、 20~30代の若い女性でも閉経する例があ るんだよ。


それに、女性にとって……。いや、幼い 子供にとって、父親と母親は絶対的な存 在だ。

両親に不当な扱いをされてきたメイさん は、両親をこわいと思い怯える反面、両 親に嫌われたくない、愛されたい、と、 愛着を感じていたと考えるのが普通だ よ。顔には出ていなくても……。

『メイさんの月経がこないこと』に、彼 女の心を知る手がかりがあるかもしれな いよ」

「メイは、私達と一緒に住むようになっ て穏やかになったと思っていたんです が……。

やっぱり、何かが足りないんでしょう か?

知らないうちに、私はメイの心の傷を深 めるような言動をしてしまったんでしょ うか?」

ミズキは前のめりになる。その顔は真剣 そのものだった。