幸せまでの距離




山梨から帰った翌日。

いよいよメイは、親猫シェルの墓を作る 決心をした。

離れるのがこわく、なかなか土に埋める 決意ができなかったけれど、山梨に行っ たことがキッカケで、ようやく気持ちの 整理をつけられるようになったのだ。

保が管理していた臍の緒を手にした時、 改めて自分の命を感じた。

シェルを抱き抱えると、穴を掘った庭の 角に正座する。

「全ての生き物は母親の体内で育ち、生 まれて、必ず死を迎える。

死体は土に還り、新しい命の栄養にな る。

それが、生きること」

ここ数日で分かったことを口にし、メイ はそっと、穴の中にシェルを埋めた。

「遅くなってごめん!」

家には入らず、門から直接庭に来たの は、他でもない、リクだった。

メイはやや驚き、

「なんで?」

「ミズキちゃんがメールくれてさ! メ イのケータイ、修理に出してるって聞い て!」

山梨から帰った昨夜、疲れていたメイは 着替えだけしてすぐに寝てしまった。服 にケータイを入れていたのを忘れ、脱い だ物は全て洗濯機に放り込んでしまった のだ。

「防水じゃないから、今朝お母さんが洗 濯終わらせた時には、ケータイの画面 真っ暗。

すぐショップ行って代替機持たされたけ ど、使いにくいから放置」

「それで、ひとりでシェルのお墓作った の?

ほんと水くさいな、メイは」

愛しそうにそう言うリクは、ここへ来る 途中に摘んだ花を脇に置くとメイの隣に しゃがみこみ、穴を埋めるのを手伝っ た。

ミズキと菜月は、近所のゴミ当番に出掛 けているので今はいない。