「すごいですね、トウマさん。もう、全 国のみんなが知っちゃった 」
後ろから聞こえた声にカナデが振り向く と、そこにはメグルが立っていた。
メグルは、カナデのことを同世代だと知 りながらも、今までのことを思い出す と、とても馴れ馴れしい接し方などでき なかった。
「何しにきたの?」
カナデはしかめっ面でため息をつく。ト ウマを奪った女が訪ねてきたので、一発 ぶん殴ってやろうという思考も働いた が、今は、そんな熱い気分にもなれな かった。
メグルはカナデの顔色を伺いつつ、
「メイに聞いたんです。ケガ、ひどくな くて本当によかったです。
もしよければ、少し、話しませんか?」
追い返す気力もなかったカナデは、メグ ルに言われるがまま、中庭に出た。
あたたかい日なのに、珍しく、中庭はが らんとしていた。他の患者の姿が全くな い。
中庭を囲む緑の木々に太陽が当たって白 く光っている。静かな風が葉を揺らして いた。
後ろでメグルの背中を見ながら歩いてい たカナデは、力なく言った。
「あんたは全部、知ってたんでしょ? 私がトウマに利用されてたことも、自分 がトウマの本命だったことも。気分良 かったんじゃない?
私のこんな姿を見て、心ん中で楽しんで るんじゃない?
わざわざ、こんなとこまで笑いにきた の?」
メグルはゆっくりカナデを振り返り、真 顔で、
「……知ってました。
ウソ言っても仕方ないので、本当のこと 言います。
……トウマさんに待ち伏せされて、付き 合おうって言われたこともあります。断 りましたけど。
だって、あんな状況で告白されたって全 然楽しくなんかないですよ。あたしだっ て、トウマさんに騙されてたわけですか ら。それに……」
メグルはまっすぐ、カナデを見た。
「あたし、トウマさんのこと嫌いになり ました。人を人として見ることのできな い人には、関わりたくありません……。
それに、トウマさんは、あたしのことを 本気で好きだったわけじゃなくて、楽な 方に逃げたかっただけだと思います。
今、俳優として活躍してるのがその証拠 ですよ。本人は自覚ないかもしれないけ ど」
カナデは面食らった。メグルがそんなこ とを言うなんて思っていなかったのであ る。


