ホテルで一夜を明かしたリクとメイ。

まるで猫のように二人はベッドの上で背 中を丸め、向き合う形ですやすやと眠っ て いた。

目覚めたメイは静かに起き、隣にリクが いることに驚くのと同時にまたひとつ、 彼との壁を壊せたのだと 確認した。

リクと共に、こんなに近い距離で睡眠で きた。以前なら絶対に無理だった。

彼の自宅で寝泊まりした時にも、常に防 犯ブザーを握りしめていたくらいだ。

いくら眠かったとはいえ、そこまで警戒 心をといて安眠できたのは、リクがいた から。

リクの行動力が、彼の心を表しているよ うで、無視はできないと思ったし、自分 ひとりではこういう気持ちを味わうこと すらできなかったと痛感した。


深い時間まで起きていたのか、リク はま だ起きそうにない。

メイはベッドを抜け出し、シャワー を浴 びに浴室に向かった。

シャワーを浴びてすっきりすると、 朝日 が部屋いっぱいに満ちていた。清々しい 気分になる。

スキンケアをしたりメイクをしたり し て、メイはリクが起きるのを待っ た。


昼が近い。チェックアウトする1時間前 、リクはようやく目を覚ました。

「……おはよう」

目をこすりながらメイに挨拶をし、 リク は照れた。

「なんか、寝起きに顔合わせるの、 ちょっと照れくさいな」

以前、自宅にメイを寝泊まりさせていた 時にはなかった気恥ずかしさがある。そ れは、これまでにないくらい、自分達が 裸の心で近づいたという証拠なのかもし れない。

リクの心情はおのずとメイにも伝わり、 彼女の頬もほんのり赤く染まるが、普段 通りの淡白な口調でそれを隠した。

「早く起きたら?」

「うん。でも、起きるのもったいない気 がする。

なんかさ、こういうのいい なぁって思っ て」

リクはまだ、シーツをかぶったまま夢見 心地な表情をしてい る。

寝る時だけではなく、寝起きにもメ イが そばにいることに、リクは幸せ を感じ た。