幸せまでの距離


メイはリクの背中に両腕を回す。

19年近く触れられずにいた距離 は、い まようやく重なり、お互いの 心は近付い た気がした。

背中に回された愛しい人の小さな両 腕。

リクは、髪の毛が逆立つような刺激 を感 じた。

「クセになるかも、これ」

メイの頭に頬を寄せ、リクは抱きし める 腕に力をこめた。

「ちょっ…! 苦しい!」

珍しく、メイが感情的になり必死に 訴え る。

本当に窒息してしまうかと思った。

「ごめんっ!」

リクは両腕を離し、息を乱すメイの 背中 を慌ててなでた。

「なんでも全力でやればいいっても ん じゃない」

メイはあきれ気味に言い、リクをにら む。

ひたすら謝るリクを見て、メイはよ うや く、光が見えた気がした。

それは、きわめて細く、油断したら 自分 の暗部にかき消されてしまいそ うなほど 頼りない光だった。

けれど、長年味わってきた暗い洞窟にい るかのような感覚よりははるかにマシ で、いまこそ頑張り時なのではないか と、メイは気持ちを引き締めた。