幸せまでの距離


リクがいれば、自分はもう寂しい想いを せずに済むかもしれない。

彼がいてくれたら、今より自分を好きに なれる日がくるかもしれない。

一方メイは、逆の可能性も考えた。

リクも男だ。自分を裏切り、傷つける存 在に変わるかもしれない。

宇都宮誠二のように、目的のために善人 面をしているだけかもしれない。

不幸な女は魅力的だ、と、馬鹿にしてい るのかもしれない。

弱っている女ほど落としやすい、と、見 くびっているのかもしれない。

「裏切ったら、殺すよ」

脅しでもはったりでもなく、メイは平ら な口調で告げた。

「私はけっこう執念深い性格でね、どう でもいいやつには何を言われてもかまわ ないけど、信用した相手に裏切られるの だけは我慢できない。

たとえ幼なじみでも、関係ない。

傷つけたり裏切ったりしたら、私は容赦 なくアンタを殺す」

「うん。そのつもりでメイと関わって る」

恐れなど、リクにはなかった。

「もし裏切るようなことになれば、俺は 間違いなく自殺するよ。

誓う。メイと幸せになるんだって。

俺達に、不幸な結末はいらない」