幸せまでの距離


抱きしめる腕に力を込めて、リクは更に 言葉を紡いだ。

「俺も、メイのことが必要なんだ。

メイなしじゃ生きられない。

傷つけてもいい、仲直りすればいいじゃ ん。

だから一生、そばにいてほしい」

リクの発した言葉は、メイだけではな く、彼の胸にも強く響いた。

言葉は、口にした瞬間エネルギーを持 ち、自分を変える。

「メイのことが、必要だ」

あたたかい体温。

これまでメイは、様々な人に抱きしめら れてきた。

メグルに、清に、ミズキ。

リクに抱きしめられることなんて想像し ていなかったし、去年の今頃は、リクの 接近を拒否していた。

彼のことを、人としてみる前に、獣の顔 を隠した男にしか見えず、ひどく恐ろし かったのだ。

今も、こわい。

ただ、前より、彼を拒絶する気持ちは薄 れていた。

行動を共にしていくうちに、リクに対す る信頼感が増していたのだろう。

リクのぬくもりを、前よりは良いものに とらえられる。