リクはゆっくり立ち上がると、微笑し た。
「わかった」
つぶやき、彼はメイの正面に移動する。
「メイから逃げるってことは、自分の気 持ちからも逃げるってことだ。
そんな半端なことしたくない」
言い切り、リクは正面からメイを強く抱 きしめた。
「ちょっと…!」
突然のことに、メイは身をよじってリク から離れようとしたが、彼の両腕は彼女 を離さなかった。
「将来のことなんて分からないけど、今 の積み重ねだと思うんだ。
今、この時を、大切に大切に育ててい く。
メイとの関係を、大切に大切にあたため ていく」
リクの体温が胸に染みる。メイは動くの をやめるとリクの胸に頬を寄せ、彼の言 葉に耳を傾けた。
「お互いのこと全部理解するのに、何年 かかるだろ……。
もしかしたら一生、完全にわかりあうこ とは出来ないかもしれない。
違う人間同士だから、これからも、価値 観の違い、考え方の違いにぶつかると思 う。
でも、それは俺達の関係だけじゃない。 地球上の人みんなに対して言えることだ から。
それに、今、メイが俺のことを必要とし てくれているのだけはよく分かる。
だったら、俺は全力でそれを満たすよ。
俺は、メイに必要とされたい」


