幸せまでの距離


メイは立ち上がり、言った。

「私を失望させないで。アンタだけは」

彼女の目は、まっすぐリクをとらえてい る。

金縛りにあったみたく、リクはソファー に座ったままメイを見上げていた。

空気が変わる。


「私はアンタの存在に賭けることにし た。

でも、今ならまだ、逃げてもいいよ」

メイは言った。

「今ならまだ、間に合う。

私から逃げるなら、今のうちだよ。

これ以上深入りされたら、私はアンタを どうするか分からない。

そうなる前に、逃げ出したってかまわな い。

今ならまだ、恨んだり憎んだりしない。


でも、これ以上関わるっていうのなら、 アンタを無事に逃がす保証はできない。

途中で見限るつもりなら、自信がないな ら、嫌になるなら、今ここから逃げ出し て、二度と私に関わらないでほしい。


アンタにもアンタの人生がある。

大学に入ったのは将来のためだろ。

なのに、私と関わり続けたら、こっちの 問題に引きずり込まれて将来に傷がつく かもよ。

無駄に傷ついて、日常生活に害が出るか もね。


最後にもう一度だけ言う。

今なら、逃げていいよ」