幸せまでの距離


今は何時なのだろう?

メイは深い眠気すら覚ましてしまうほどの寒さで目を開いた。

カーテンのかかっていない窓の向こうには、淡い月の光が丸く揺れており、それがなぜだか妙にこわかった。

“まだ、夜?”

頭がぼんやりして、体の震えがとまらない。

寒いのに、なぜか全身にはぐっしょりと大量の汗をかいている。

体にかけていたバスタオルで体の水滴を拭うと、かたく閉じた襖(ふすま)のすき間から白い光が伸びているのに気がついた。

翔子が帰ってきている!

メイはそっと襖を開けようとし、その手をひっこめた。

“―――!!”

翔子以外にも人がいる気配……。

“だ、れ……?”

音を立てないよう、耳を襖に近づける。

「隣にガキいるんだろー?」

「いつもこのくらいの時間には完全に眠ってるから大丈夫よ。

ずっと我慢してたのよ、私。早くしましょ?」

そこで翔子と見知らぬ男の話し声は途切れ、メイの部屋にわずかに差し込んでいた光も消えた。